子供の日の休日、仲間と箱根の金時山へトレランに行ってきました。当日は絶好の登山日和。暑すぎず寒すぎず、吹き抜ける風が心地よい一日でした。
写真は金時山山頂(標高1,212m)から望む富士山です。

今回のコースは、足柄駅〜金時山〜明神ヶ岳〜明星ヶ岳〜塔ノ峰〜箱根湯本駅。総距離23km、累積標高は上り1,923m/下り2,142mというなかなかのハードコースです。金時山直前の急登では、延々と続く階段に息が上がりました。
特に堪えたのが、明星ヶ岳から箱根湯本への一気の下りです。木の根や岩場が続く悪路を、走るというより「飛び降りる」ように進むため、大腿部の筋肉はもうパンパン。


翌日、同行者がお尻から太もも、ふくらはぎにかけて激しい筋肉痛(遅発性筋肉痛:DOMS)に見舞われたため、さっそく鍼治療を行いました。
実は、筋肉痛の正体は「筋肉そのもの」より、筋肉を包む「筋膜」にあると言われています。痛みを感じる神経は、筋肉よりも筋膜に多く存在しているからです。

実際に筋肉痛を起こしている部位に鍼を刺すと、鍼先に「プツン」と薄い膜を突き破るような独特の感触があります。これは正常な筋肉ではまず感じられない、炎症や癒着を起こした筋膜特有の手応えです。
筋膜の厚みは、深筋膜は3層構造(斜め、縦、横)で、約1mm前後。あるデータでは、肩こりを感じている人の平均筋膜の厚は1.67㎜(未自覚の人は1.23mm)という結果も出ており、不調がある場所ほど筋膜は厚く、硬くなっています。
(写真は、鶏肉の筋膜)

鍼の効果:
- 物理的な癒着の剥離(「プチッ」という感覚)筋肉を包む筋膜が固まり、他の組織と「癒着」して動きが悪くなった状態(滑走不全)に鍼を刺入し、その膜を破ることで物理的に滑り(滑走性)を良くします。特に深層の筋肉にこびりついた筋膜のコリに対し、ピンポイントでアプローチできるため即効性があります。
- 深部組織への直接的な刺激(トリガーポイント)マッサージなどの手技では届かない、深層筋肉の緊張(トリガーポイント)に直接鍼が届きます。これにより、頑固な慢性痛の根源となっている筋膜の緊張を強力にほぐすことができます。
- 血流改善と間質液の循環促進鍼の刺激が筋膜周囲の血流を促進し、酸素や栄養が行き渡ることで、筋膜の粘度(硬さ)が低下し、柔軟性が戻ります。また、筋膜の間に満ちている間質液(滑り成分)の通り道を改善することで、動きがスムーズになります。
- 組織のリモデリング(自己修復作用)鍼によって生じる微細な組織の損傷を、身体が修復する過程で、新しい組織が作られ、硬くなった組織が柔軟性を持つように生まれ変わる(リモデリング)効果が期待できます。
- 参考文献(興味のある方は、読んでみて下さい)
要約:DOMS(筋肉痛)の主な痛みの発生源は筋肉ではなく「深部筋膜」
■ 研究目的
遅発性筋肉痛(DOMS)の痛みが 筋肉由来か、筋膜由来か を明らかにするため、
MRI T2マッピングと超音波シアーウェーブエラストグラフィー(SWE)を用いて評価した研究。
■ 方法
12名の参加者が下腿のエキセントリック運動を実施。
運動前後に
MRI(T2値)
超音波SWE(硬さ:SWS値)
を測定し、痛みの強さ(VAS)と比較。
■ 主な結果
- 痛みは24〜48時間後にピーク
(DOMSの典型的な時間経過) - 筋膜(deep fascia)のT2値・硬さ(SWS)が大きく上昇
筋膜の浮腫(むくみ)と硬さは 48時間後に最大
筋肉よりも筋膜の変化の方が痛みと強く相関
筋膜T2値と痛み:r = 0.87(非常に強い相関)
筋肉T2値と痛み:r = 0.76
筋膜SWSと痛み:r = 0.46
筋肉SWSと痛み:相関なし
- 筋膜は痛覚受容器が豊富で、痛みに敏感
筋膜は神経終末が多く、炎症や浮腫により痛みを感じやすい構造。 - 結論:DOMSの主な痛みの発生源は筋肉ではなく「深部筋膜」
筋膜の浮腫と硬さの増加が痛みと最も強く関連
MRI T2マッピングとSWEは筋膜の状態を評価するのに有効
DOMSは筋肉と筋膜の両方の損傷だが、痛みの主体は筋膜。
Delayed-Onset Muscle Soreness Begins with a Transient Neural Switch
Int. J. Mol. Sci. 2025, 26(5), 2319; https://doi.org/10.3390/ijms26052319
要約:Piezo2 (固有感覚proprioception・触覚・圧覚を担う主要なメカノセンサー)は DOMS(筋肉痛)の「最初のスイッチ」だった
■ 主な結果
Piezo2 の一時的な故障 → 固有感覚の乱れ → 二次的な筋損傷 → 痛み
Piezo2 は 6〜8時間で回復するが、その間の誤作動が DOMS を引き起こす。
